モンテッソーリ教育「子どもの家」100周年記念!
中央大会

2007年10月27日・28日 TOC有明


マリア・モンテッソーリ博士が1907年、ローマのマルシ街51番地に「子どもの家」を開設してから、今年で100年目となります。100周年記念事業として、イタリアでも、アメリカでも大きな大会が催されましたが、日本では中央大会が大々的に開催されました。この大会に参加させていただき、改めてモンテッソーリ教育の素晴らしさを学び、現場の先生方の工夫や熱意を目の当たりに拝見しました。子どもの可能性を信じて、能力を引き出す環境づくりに励むモンテッソーリの教育は、今後もっと注目され、教育の現場で取り入れられていくことでしょう。中央大会の様子をレポートします。

                               前畑 典子
10月27日と28日の両日で記念講演が3つ行われた。27日には、エリザベト音楽大学教授相良敦子先生が、『モンテッソーリ教育の「実り」と「根っこ」』という題で、28日には、AMS(アメリカモンテッソーリ学会)元会長であり、ウエストサイド・モンテッソーリ・スクールの校長である、マレーン・バロン先生の、「モンテッソーリ教育 − これまでの100年、これからの100年」という題で講演、その後本大会の実行委員長松浦公紀先生の、「日本に根ざしたモンテッソーリ教育のあり方」という講演が行われた。

モンテッソーリの教育方針は、上から下に指示したり、教え込むのではなく、子どもの本来持っている能力を信じて、自分で考えて解決できるような環境づくりをし、自主的に行動するのを見守るというやり方をとるところが、一般に行われている幼児教育や一斉保育とは大きく異なっている。3つの記念講演を聞いて、このモンテッソーリの教育方針が実践されるためには、現場の先生方が、いかに忍耐強く一人ひとりの子どもの能力を大切に包み込み、育くむことに日々苦心しておられるかを改めて認識し、胸が熱くなる思いだった。

 相良敦子先生は、医学博士であったモンテッソーリ女史が、障害児の教育を通して、生理学的教育学の観点からモンテッソーリ・メソッドを考案されたこと、特に敏感期といわれる幼児の時代に、学ぶ環境を整えてあげることが大切だと話された。また、100年前には未解明だった現代脳科学上での裏づけなど、モンテッソーリ教育の科学的側面にも言及された。

マリーン・バロン女史は、NY市ウエストサイド・モンテッソーリ・スクールの校長先生で、ニューヨーク大学教授。子どものその時持つ能力は一人ひとり異なるので、高すぎるレベルの課題を与えるのではなく、その子どもの身の丈に合ったレベルを設定してあげることで、子どもは必ず伸びていくと話し、今は民主主義の時代、専制君主のような先生が、子どもは何も知らないから教えてあげるという姿勢で教育するのではなく、一緒に考える、むしろ、子どもに考えさせることが大切だと説かれた。また、子ども達が成長するための環境づくりとして、足りない部分の環境を整えてあげることが学校の使命であり、そのためには、家庭や両親との連携プレイが欠かせないと説かれた。パワーと愛情溢れる教育に対する姿勢、理路整然とした分かりやすいお話しに、聴衆は完全に魅了された。

松浦先生は、松浦学園 子どもの家を主宰される傍ら、日本モンテッソーリ教育綜合研究所の主任実践講師をされ、今回の中央大会の実行委員長。常葉学園短期大学でも教鞭をとっておられる。ご講演の中では、海外のモンテッソーリ校が120カ国に3万校ある中で、日本はまだたった600校しかないことに言及され、モンテッソーリ女史の考え方は、普遍性があればこそ、100年という時間を越えて色々な国で実践されてきたのだから、これからも、日本では、日本の文化、風土にあったモンテッソーリの展開をしていきたいという力強い講演をされた。会場は、両日とも400名以上の参加者でいっぱい。皆さん熱心にメモを取りながら、中には、お子様を抱っこしながら、講演に聞き入っているお母様も。会場のホールでは、北海道から沖縄まで全国で開かれた大会の報告発表や、充実した展示発表と教具や本の展示販売が行われていた。


少子化の時代を迎え、子どもに関するさまざまな暗いニュースを耳にするにつけ、
子ども達が大きく羽ばたいてくれるような環境づくりを、大人たち皆がしていかなければいけないのではないかと思う。医学の勉強から転じて、障害児教育の実践に携わる中で、子ども達の持つ可能性を信じて、それを伸ばすことの大切さを説いたマリア・モンテッソーリ女史の教えが、現代においても、いや、今の世にこそ、広く、深く浸透していってほしいと強く感じた。

充実した展示発表




教具教材の展示
分科会では、2日間に渡って、0〜3歳のモンテッソーリと3歳〜6歳のモンテッソーリ教育、地理、地学の提示、小学生のモンテッソーリなど、盛りだくさんの講演が行われ、更に日曜日には別室で様々な実践発表が行われるという、どれも聞きたいプログラムが満載の日程。選択に迷いながらも、「0〜3歳」の分科会と、教室Aの実践発表を聞いた。


実践発表では、モンテッソーリの教室で、先生方が日々教材を工夫し、子ども達が自主的に関わっていけるように努力しておられる様子がよく分かった。水戸偕楽園の梅の実を拾って、さまざまな「お仕事」を生徒とともに実践しながら、最後には作った梅ジュースの味わい分けまでするという完成された行程に感心。湾と半島の地形認識から始まって、地図帳の索引を引くまでに子どもの関心を深めていく具体から抽象への素晴らしい実践例、レゴブロックを使って、モンテッソーリ式提示を行い、子どもが自分で作品作りに取り組めるような環境を整えた実践など、どの発表も大変興味深く、日頃先生方が子ども達とともに過ごす時間の成果の結晶をいっぺんに拝見しているような贅沢な気分で発表を聞かせていただいた。先生方のご苦労と熱意には、本当に脱帽。全ての発表を聞くことが出来なかったことがとても残念に思える、充実した発表ばかりだった。