香港、ニュルンベルグ、ニューヨークで行われたトイフェア
駆け足で見てきました。ご報告です。

前畑 典子
  1. 香港玩具見本市
  2. ニュルンベルグ・トイフェア
  3. スイスのおもちゃ屋さん
  4.アメリカン・インターナショナル・トイフェア(NY)


4.アメリカン・インターナショナル・トイフェア(NY)

 

 ヨーロッパから大西洋を渡ってニューヨークに行けば、日本から行くよりはるかに早くて楽チンかと思ったのは間違いでした。チューリッヒを発って約9時間みっちりと飛行機に乗ってようやく到着したのは、NYトイフェアの前日、14日でした。
 大雪に遭遇した年もありましたが、今年は比較的暖か。真冬といってもニューヨークはいつも観光客でいっぱい。ホテルも相変わらず取りにくく、今年はアメリカの友人に頼んで予約してもらいました。オバマ大統領に代わってからアメリカも変わったかな?というかすかな期待は、相変わらずゴミがちらかった道路を見ると、まだ一人ひとりが出来るところから始めようという熱い新大統領の呼びかけが行き渡っていないのかもな、などとぼんやり考えながら市内に入りました。
 ニューヨーク・トイフェア、今年は2月15日〜18日の開催でした。来年2010年は、2月14日〜17日の予定です。

 今年のプラントイの展示は、100平米のスペース。昨年の倍の広さで、グリーン・トイ、グリーン・カンパニーをアピールしています。
 2009年のカタログには、ゾウさんと、イラストレーターの描いた楽しいイラストがのっています。
 写真は、実際の製品。イラストの部分は、子ども達のファンタジーの世界です。ゾウさんは、世界でも一番大きな動物。ジャングルがなければ生きていけないゾウさんのためにも、地球の環境を守らなければ、と、28年前の創業時から叫び続けてきた地球環境を守るための木製玩具というスタンスを大きくアピールしました。
 全米からバイヤー、小売店さん、そしてアメリカ独自の制度であるレップが大勢押しかけ、プラントイのブースは連日大盛況。皆真剣に商品を選んでいます。
 
 2006年にプラントイUSAが設立されて以来、プラントイはアメリカで大ブレイクしています。素朴で、オーガニックな製品が大好評を博し、取扱店さんは口を揃えて「ビューティフル!」を連発しています。シカゴの小売店さんに景気の行方を聞くと、「昨年私達はラッキーでした。あまり景気の影響を受けない地域にあるので、売り上げが落ちることはなかったの。今年も、オバマに代わって景気が良くなるかですって?そうね、期待はしているわ。それに、おもちゃを買う機会は、クリスマスやお誕生日など、必ずくるものでしょう? あまり心配していません。」ということでした。
 展示会の後、ミーティングをするプラントイ・スタッフ。皆揃いのポロシャツで頑張りました。プラントイUSAのニタヤ社長。カナダのプラントイ代理店であるヘンリー氏は、カナダの玩具協会からベスト・ホールセラーとして表彰されました。
 
 アメリカでは、昨年からアースディへの参画も積極的に行われています。もとより、植林された木を伐採しないためのゴムの木の再利用です。地球にやさしく、こどもたちにもやさしく、をモットーに下プラントイは、企業としても、代替エネルギーやバイオマスなどに取り組み、グリーン・カンパニーを目指します。
 これは、今年のアースディ用ののぼりと、子ども達に配られる、エコハウスの紙製のキットです。日本でも、4月19日に静岡で行われるアースディに参加します。






 児童心理学に基づいて優れた教材を作るタグトイ社も、今年はニューヨーク・トイフェアに戻ってきました。懐かしい、メスタニャック博士夫妻と3年ぶりに再会しました。アメリカのバイヤー達によると、タグトイはモンテッソーリ教材として、また教具として高価格帯ではあるけれど、定評があり人気の商品だということです。




 もうおなじみのコンストラクションキット、アイガミの作者、ボアーズ氏もアイガミのデモンストレーションをしていました。
 
 
 熱心に話を聞いていく小売店さん達。カナダやアメリカでも、アイガミは大変ポピュラーになってきているようです。書店さんやおもちゃ屋さんで良く見かけます。ドクター・トイ賞や、ペアレンツ・チョイス賞を受賞し、教育玩具としても定評があります。

 上の写真でボアーズさんが手に持っているのは、アイガミのスター。定価は税抜き1,000円です。そもそもボアーズ氏が日本人から折り紙を教えてもらったのが、この形だったそう。これを、何とかプラスチックでできないかと考えた末に作ったのが、このアイガミ・キットだったということでした。このスター・キットは、日本でも大変人気があります。折り紙よりも小さなお子さんでも簡単に操作できる点が楽しい。是非お試しください。


ニューヨークの街を行く

 59丁目のコロンバス・サークルにできた新しいショッピングセンター。
ニューヨーク市内は老舗の商店が多い中、新しいビルのショッピングセンターは何か目新しい感じがします。広々としたエントランスホールから吹き抜けの2階に上がると、ギャップやエスプリなど、若い人たちに人気のファッションがおしゃれなディスプレイで並びます。店員さんも、「お安くなっていますよ!」と呼び込みに一生懸命。Tシャツなどは、3枚買うと2枚分のお値段、などのディスカウントが行われていました。世界不況の発端となった国での景気が懸念されていますが、この新しいショッピングセンターはお客様で賑わっていました。
 地下には、有機栽培の食材で有名なチェーン・スーパー、ホールフーズが入っており、こちらはレジ待ちの長蛇の列。私も夕飯を買って帰りましたが、サラダ・バーやイタリアンなど、持ち帰り惣菜の豊富さも素晴らしく、店内で買った物を食べることもできるようになっているのは、とても合理的です。マンハッタンの商店街の中には、テナントがいなくて空き家状態のお店も少し見かけました。


プラントイが置いてあるという、メトロポリタン・ミュージアム・ショップ、MoMAデザイン・ショップ、そしてニューヨークの老舗おもちゃ屋さん、ファオ・シュワルツに行きました。
 MoMAデザインショップは、ニューヨークを代表する近代美術館にあるデザインショップ。日本にも、表参道にショップがあります。ここでは、4年ほど前からプラントイを扱っており、今回ショップにはドールハウスの家具セットとお人形がかわいく展示してありました。その他、スネイルやアリゲーターなどの定番商品も販売しています。


 メトロポリタン・ミュージアムは、所蔵する美術品が330万点という、世界三大美術館のひとつ。私は、メトロポリタンには今回初めて行きました。プラントイのビトール社長が、メトロポリタンのショップにもたくさんプラントイがおいてあるよ、と言うので行ったのですが、ビトールさんもまだ行ったことがないのだそうです。荘厳なエントランスに気圧されながらも、わくわくしながらショップを探すと、まずその大きさにびっくり。MoMAデザインショップの3倍はあるかと思われる広さと、アクセサリーや本、インテリア小物など豊富な品揃え。クリスマス用ギフトなどをここでショッピングするニューヨーカーもたくさんいるそうです。おもちゃは、“Met Kids”という2階のショップにあり、イン・ショップのエレベーターで2階まで行きました。

 メット・キッズのショップは、思ったより広くありませんでしたが、厳選された世界のおもちゃがそこにはある、と言う感じ。そして、プラントイも、何と!ゾムツールとアイガミもそこにあったのです! 感激でした。まるで、イメージミッション木鏡社ショップのようで、懐かしい商品にこの憧れのショップで出会った感激はひとしおでした。プラントイの商品は、日本でも人気のオーバル・シロフォンやドラム、そしてバンジョーやミュージカル・バンド等の音系の玩具も含めて2棚展示・販売していました。嬉しかったです。その他には、木製玩具はほとんど置いておらず、クラフト系のおもちゃが多かったです。


 独特の衣装を着た警備員のいるファオ・シュワルツはニューヨークでも古くからあるおもちゃ屋さんで、創業は何と1862年だそうです。5番街の58丁目にある店内には、アメリカン・ケンネルクラブとシュタイフがタイアップして作った犬のぬいぐるみがどっさり、そして、PBの木製玩具も店頭に並べてありました。プラントイは地下のベビーコーナーに一棚、大型商品も含めて展示してありました。店内ではカラフルなキャンディーなども売っていて、いつ行っても、大人でも楽しいお祭りのような気分にしてくれるおもちゃ屋さんです。

 
 駆け足の出張でしたが、日本を一歩出ると、あれもこれも目新しく、おのぼりさん気分で興味津々、あれこれ見てきました。飛行場や美術館などでの子どものプレイルームや専用のトイレなど、日本でも珍しくなくなりましたが、色々な工夫が見られました。そんなあれこれをまとめて書いてみました。
チューリヒの飛行場で見たプレイコーナー。

壁面にあるメモリーゲームは備え付けで、パズルピースだけひっくり返して遊べるようになっています。パーツが散逸しなくて、良いアイデァだと思いました。
広い待合スペースのコーナーにあって、大人の目の届くところなのも、安心ですね。
 
      
 
ニュルンベルグの飛行場で見たプレイコーナー。

 乗用やつみきのおもちゃがあり、きちんと片付けられていました。このコーナーは、出入り口のスペース前面が開放している他は、仕切り板で囲まれていました。どのコーナーも、カラフルで楽しい色合いです。
 
ニュルンベルグ飛行場内レストランの女性トイレにあった、ベビー用授乳室兼おむつ交換部屋。
 
 狭いけれど、ちゃんと独立した部屋になっていました。オムツを交換する台は、お母さんが立って交換するのに丁度良い高さ。そして、感心したのは、赤ちゃんを寝かせる台のまわりには、楽しいタイル装飾や、モビールが飾ってあったことです。さすが、おもちゃの都市、ニュルンベルグですね。
 興味深いのは、男性のトイレにも、オムツの交換マークがついていたことです。日本では、女性用トイレだけでしょうか?調べたことはありませんが・・・ ドイツでは、男性トイレにも女性トイレにも、同じように赤ちゃんマークがついていました。
     
 
バーゼルのティンガレー美術館のクロゼットコーナーで見かけた、子ども用のコート掛け。
 
 冬寒いこの地方では、厚手のコートがじゃまになります。子ども達の来館者も多いこの美術館では、コートの収納に一工夫。木を組んだだけのコート掛けです。これなら、一目瞭然ですね。高さも、子どもの手の届く高さでした。
 右の画像は、ティンガレー美術館のワークショップで、子ども達が作った作品。入り口に飾ってありました。

 これは、チューリヒの飛行場で見た、非常口のサイン。分かりやすいですね。
 色々なところで、人にやさしいデザインが目に入りました。使う人に歩み寄ってくれるようなデザインです。例えば、ドイツの地下鉄は、駅に着いてドアが開くと、自然にホームと入り口の間の隙間を埋めるような板が出ます。「ホームとの間が開いています、お気をつけくださ〜い!」というアナウンスの代わりに。スイスの市バスは、乗客が乗るときにステップが下がります。正確には、エア・ダンプといって車体が傾くらしいです。LRTという路面電車も、低床式や、駅に着くとステップが降りて来くるものなど、乗りやすい配慮がしてありました。
 
 最後にご紹介するのが、スイスの鉄道公式時計モンディーンの置時計。小さいですが、とても見やすいです。近くで立っていても見やすいように、角度をつけたフェイスになっているからです。こんなちょっとした、人にやさしいデザインの秘密、日本にも、たくさんあるのかもしれません。色々なことを考えた出張でした。長々とお付き合いくださってありがとうございました。